今年の有馬はまさにディープインパクトのためのレースとなった。
圧倒的な力の差を見せ付ける素晴らしいレースだった。
ディープのあの走りにあれこれ分析をする必要などないだろう。
そのような次元を超えた走りだった。
日本競馬史上最強馬だ。
今後は、種牡馬として自身を超える馬を輩出し、父サンデーを超えてもらいたい。
ポップロックは、4コーナーで馬群に包まれ、直線半ばまで前が壁になるという事態になってしまったが、残り1Fでようやく外に出すと、粘るダイワメジャーを鋭い伸び脚で交わした。
「本来ならもう少し前でレースをしたかった。3コーナーで動いていこうとしたが、他馬が動かなかったので待った分、4コーナーでもゴチャついた中に入ってしまった」とペリエ自身が認めたように名手らしかぬロスのある危ない騎乗だったが、この馬の力で2着まで押し上げた。
この馬は、ここにきて想像以上に力をつけているようだ。
今年の4月にようやく500万下を勝ち上がった馬が、暮れの頂上決戦で2着、恐るべき大出世だ。
これまで期待を裏切ってきたエリシオの産駒にようやく大物が誕生した。
来年は、ドリームパスポートらとともに日本競馬をリードしていってもらいたい。
ダイワメジャーはスタート直後、これまでとは違うペースに戸惑ったのか、少し口を割って行きたがっていたが、絡んでくる馬がいなかったのですぐに落ち着き、道中は実質ハナに立つ形となり、マイペースで走っていた。
早めのロングスパートが予想された各馬がそれぞれ内で包まれたり、脚色が悪くなったため、自然と4コーナーで先頭に並びかけるように進出し、残り300メートルで先頭に立ったが、それも束の間、ディープにあっという間に交わされていってしまった。
それでもこの馬もあっさりと失速はせず、最後まで持ち味の粘りを発揮し、何とか3着を死守した。
この距離はこの馬にとって明らかにベストとは言えないが、それでもそれなりに走れるところを見せてくれたので、集大成の年となるであろう来年に向けてレースの選択肢の幅が広がったのは大きな収穫だった。
来春は、香港のクイーンエリザベス2世Cから安田記念、そして宝塚記念というローテーションでマイル、中距離路線の絶対王者として、さらに勲章を増やしてもらいたい。
2番人気に支持されたドリームパスポートは、直線の急坂を上がってから、馬群を割って物凄い勢いで最後に伸びてきたものの、時すでに遅し、ダイワメジャーを交わせずに、わずかハナ差の4着。キャリア13戦目で初めて3着以内を外してしまった。
「最初のコーナーで、外に出したかったが、横が壁になって出せなかった。下げて出せばよかったのかもしれないが…。高い能力は感じたけれど、道中で我慢しなければならなかったことが最後に響いた。ボクがもっとうまく乗ってたら3着、いや、2着はあったかも」と内田博が語ったように、内枠が災いして、騎乗ミスに繋がった。
ペースの上がった4コーナー手前で外にいたウインジェネラーレと接触し、直線でも前にいたポップロックの外へ出すタイミングが合わず、一瞬手綱を引き進路を内へ切り替えるロスが痛かった。
もっとスムーズに馬群を捌けていれば、2着はあった内容だっただけに、惜しまれる。
それでも、3歳馬にとって過酷なローテーションの中、まったく崩れずに安定した結果を残したのは立派。
来年は、念願のタイトルを手にして欲しい。
春2冠馬メイショウサムソンは、4コーナーでダイワメジャーのすぐ外から仕掛け、この馬のレースをしたが、そこから皐月賞のときのような伸びが見られず、5着まで。
最後に伸びを欠いたのは、太め残りの影響だろう。
石橋は「体は増えていたけど、全く問題なかった。」と言っていたが、腹回りに余裕があり、とても今年最後の決戦に挑むギリギリに研ぎ澄まされた馬体ではなかった。
輸送によって絞れればと期待したが、のんびりとした性格の馬だけに、その効果もなかったようだ。
血統的に3歳春で成長が鈍る馬ではないので、暖かくなり馬体が絞れる来春に再度期待したい。
デルタブルースは、メイショウサムソンと馬体を併せる形で3、4番手を追走し、道中のポジション自体は悪くなかったが、4コーナーで窮屈になり身動きが取れなくなってしまい、この馬の持ち味である息の長い末脚のロングスパートを発揮できずに6着に終わった。
「本当はダイワの前あたりで早めに動いて我慢させるのが理想だったが、動くに動けなかった。結果的にヨーイドンの競馬になってデルタの持ち味を生かせなかった」と岩田が認めるように、スパッと切れる脚が使える馬でないので、本来ならもっと早く3コーナーあたりから積極的に動いていくべきだった。
トウショウナイトは、14キロも増えて過去最高となる馬体重が堪えたのか直線伸びずに7着。
武士沢にも前走のような思い切りの良い早仕掛けが見られなかった。
4コーナーではディープより後ろの位置。
あれでは、前走で見せたこの馬の持ち味である渋とさが生かせない。
煮え切らない勝負弱い騎手とはこんなものなのであろう。
前走できっかけを掴んでくれたと思っていたのだが・・。
アドマイヤフジはやはり走る馬だ。
長期休養明けながら5着から差の無い8着に入って見せた。
来年は飛躍の年なりそう。
アドマイヤメインは本調子でないようだ。
菊花賞の激走の疲れが残っているのではないだろうか。
この馬の力はこんなものではない。
来年に期待だ。
スイープトウショウは、実力や体調面、展開という以前に精神面の問題で、彼女は既に気持ちがレースをする方向に向いていないようだ。
人間があれこれ試行錯誤しても、子孫を残すという動物の本能の前には、なす術は何もないだろう。
年齢的にもう引退させてやった方がいい。
スウィフトカレントも体調が万全ではないようだ。
来年の巻き返しに期待。
血統的にマイルでの走りを見てみたい。
直線の長い東京コースは合うので、アサクサデンエンとの兄弟対決も実現するかもしれない安田記念はおもしろそう。
前走とは一転して中団からの競馬となったコスモバルクは、3コーナーから仕掛けたものの本来の行きっぷりではなく、4コーナーで万事休す。
さすがに秋の連戦が堪えたのか、体調が万全ではなかったのだろう。
いくらタフな精神力を持つバルクとは言え、やはりこの秋と冬に北海道から何度も往復するのは、大きなハンデ。
また、馬体を絞ることに苦労したように冬場の北海道で調教を積んで、レースに挑むのも不利。
気温差の激しい地へ移動するのも、体調管理の面でリスクが伴う。
そういったハンデを乗り越えるところに、敢えて道営所属のまま中央のGIに挑戦する意義があると言ってしまえばそれまでだが、バルクのこれまでの競争生活を振り返ると、ローテーションはもちろん、強引な脚質転換指示を含めオーナーサイドの誤った考えによってその才能が徐々に蝕まれていったような気がする。
夢を追い求めるのもとても素晴らしいことだが、陣営にはもっとクレバーになって現実的にバルクの事を考えて欲しい。
陣営のコメントを聞いていると、「バルクならこれくらい大丈夫」、「バルクならやってくれるはず」、「バルクなら乗り越えてくれる」など、「バルクなら・・」と過信し、過度に期待しすぎだと思う。
シンガポールでアクシデントがありながら、宝塚に強行参戦したときもそうだった・・。
さて、話をバルクの集大成となるであろう来年に向けよう。
今年の初めにもメルマガの方で指摘したが、春は天皇賞には向かわずに、距離適性を考慮し、香港かまたシンガポールに遠征すべき。
今年の場合は天皇賞への道が閉ざされ、仕方なくシンガポールに向かった形ながら最高の結果が出たので、当然来年は最初から目標に据えて万全の調整をしてほしい。
さらに、話は早いが、バルクの競争生活最後の戦いになるであろう秋そして冬は、GI3連戦などと言わず、明らかに不得手な左周りの東京でのGI2戦は見送り、バルクが最も持ち味を出しやすい有馬一本に絞ったローテーションを組み、早めに美浦に入厩して調整してもらいたい。
今年もそうしていれば、有馬でバルクの今年のベストレースが見られていたはずだと信じている・・。
(ひょっとしたら、自分もバルクに過度の期待をしているのかもしれないが・・・。だが、ファンはこれでいいのだ。)
「勝負どころから早めに動いて行ったが、4コーナーではもう手応えが怪しかった。最後ももう少し伸びてくれるかと思ったんですが…。あの馬体(10kg増)でジャパンCを好走した反動が出たのかなあ。スーッと行ったところで終わってしまった・・。こういう淀みのない展開も合わないのかもしれません」(五十嵐冬樹騎手)