2006年 04月 15日
九州産馬のクラシック出走 ~ミッキーコマンドの偉大なる功績~ |
本日、メルマガ版特別号を発行しました。
内容は先日、 桜花賞に出走したミッキーコマンドの健闘と功績を称えるコラムと、
今日、中山グランドジャンプ(JGI)に出走したバルトフォンテン(牡5)の父ダンツシアトルについての特集です。
今日は特別にそのコラムをこのブログでも掲載します。ダンツシアトルの特集については、よかったらメルマガの方で読んでみてください。
☆★☆ 思い入れコラム ☆★☆
九州産馬のクラシック出走 ~ミッキーコマンドの偉大なる功績~
3歳牝馬クラシックレース・桜花賞。
人間で例えると高校生ほどの年齢の少女たちが、桜舞う中で一生に一度の栄冠を掴むために競うレースだ。その華やかな大舞台に、今年は1頭の地味な血統の少女が出走してきた。
彼女の名はミッキーコマンド。生まれは九州・宮崎。
九州は馬産地としては、質・量とも北海道のそれにはるかに及ばないいわゆるマイナーな馬産地である。当然のことながら、そこで供用されている種牡馬もマイナーの寄せ集めとなっている。
彼女の父の名はダンディコマンド。
現役時にGI勝利という実績のある種牡馬でさえ、結果が出なければ数年で廃用となってしまう厳しい世界の中で、ダンディコマンドは現役時にGI勝利もなく、わずか重賞1勝の実績があるだけだ。産駒数は地方も含めてわずかに10頭。中央に限っては2頭の産駒しかいない。
そんなマイナーな種牡馬を父にもつ地味な血統のミッキーコマンドが、良血馬や素晴らしい実績を残してきた馬たちに混じって、華やかな大舞台に出走してくれたのだ。
彼女を人間で例えるなら、田舎から都会にやってきた純朴なスポーツ少女といったところか。彼女は昨夏、地元九州で2勝をあげ、地味ながらそれでも素晴らしい輝きを放っていた。
夏の日差しが良く似合う純朴なスポーツ少女を連想させる。
良血馬のアドマイヤキッス、フサイチパンドラなどは大富豪のお嬢様であろう。
勝ったキストゥヘブンは良血ながら前者とは少し趣が違い、老舗の名店のお嬢様かな。
キストゥヘブンの血統は以前このメルマガでも紹介したように、名牝スイーブの血を引く古くから日本で活躍している血統である。
それに対してアドマイヤキッス、フサイチパンドラの血統は近年日本に輸入された良血だ。
他にも、エイシンアモーレなどはイケイケのギャルのようなイメージがある。
血統はあまり良くないが、ここまでイケイケで数多くのレースを使われてきており経験豊富だ。また彼女の父エイシンワシントンもイケイケのスピード馬だったし、オーナーの平井豊光さんも調教師の瀬戸口師もイケイケでレースを使うタイプだ。
こんなふうにイメージしだすと、エイシンのあの黒と赤のストライプの勝負服の色が、遠目に見ると今ではすっかり見かけなくなった顔グロギャルの顔の色に見えてきてしまうからおもしろい。
エイシンワシントンは種付け頭数がそれほど多くなく、このメルマガのラインナップに加えるべきか非常に悩んだ種牡馬の1頭である。しかし、エイシンワシントンは産駒数のわりに産駒の成績が良く、サイアーランキングもこのメルマガで紹介している種牡馬に比べかなりいい成績であり、また将来的に種付け頭数が増え、種牡馬としてさらに活躍できるであろうと判断して、それに加えなかった。
そんな経緯があるだけに、その産駒のエイシンアモーレにも密かに注目していた。
話が少し逸れてしまったが、このような面々が参加する華やかな大舞台にミッキーコマンドも参加できたのだった。
彼女の単勝人気は当然のことながら、最低の18番人気だった。
また、ある競馬掲示板では、彼女について「こんな弱い馬がGIレースに出走できてしまうくらいなら、九州産馬限定レースなんて無くしてしまえばいい。」などと揶揄するコメントもあった。
彼女はその九州産馬限定レースを勝って、桜花賞出走に足りうる賞金を獲得している。
九州産馬限定レースは、言ってみればJRAによる弱者救済措置である。なかなか勝つことが出来ない九州産馬に対して、2歳の小倉戦に限り数レースだけ設けられている。
ここ日本における人間社会では、小泉改革により格差が広がってしまったと言われているが、サラブレッド生産界では、その格差は人間社会の比ではない。
社台グループの一人勝ちという状況が続いている。
その大きな牙城を崩そうと、他の生産者たちが必死に試行錯誤しているという構図だ。
その中で九州の生産者はそんな構図にも無関係と言える程はるかに及ばない劣った環境にいるのだ。
ちなみに2004年の統計によれば、国内のサラブレッド総生産頭数7773頭のうち7381頭が北海道産で、北海道以外では青森県 (213頭)、鹿児島県 (34頭)、宮城県 (33頭)、宮崎県 (24頭)、千葉県 (23頭)となっており、東北と九州が北海道に続く馬産地ではあるが、その規模とレベルの隔たりはあまりにも大きいというのが現状である。
そんな劣った環境の九州馬産地から、今年は1頭のヒロインが非常に限れた馬だけに与えられる桜花賞のゲートに入ることができたのだった。
レースでは、彼女は自分の持っている力を十分に発揮し、頑張ってくれた。
結果は11着。それでも大健闘と言えるだろう。
前述した“良血のお嬢様”フサイチパンドラ、“イケイケギャル” エイシンアモーレ、その他に重賞を連勝していたダイワパッションやGI勝利のあるグレイスティアラなどに先着したのだ。
私は彼女を褒めてやりたいと思う。また偉大な功績を残したとも思う。
僅か10頭の産駒しかいないマイナーな種牡馬の子供でも、また劣った環境の九州馬産地の生産馬でも、あのような華やかなスポットライトを浴びる大きなレースに出走できるということを証明してくれたのだから。
彼女の桜花賞出走は九州の生産者やその他の小規模生産者たちに夢と希望を与えてくれただろう。
また父ダンディコマンドの種牡馬としての評価を高めてくれだろう。
そのダンディコマンドは、現在は北海道の日高で供用されている。
当然、繁殖牝馬の質も九州より高い。
ダンディコマンドの今年の種付け頭数とその相手に注目である。
おそらく彼女がGIレースという大舞台に立つのは、これが最初で最後となるかもしれないが、決して悲観しなくてもよい。
彼女は確かに大敗してしまったが、仁川の大舞台を飾った桜とともに、散ってしまった訳ではないのだ。
その大舞台に、小さくても偉大な足跡を残したのだから。
そして九州の生産者たちに夢と希望を与えたのだから。
これからも彼女の戦いは続いていく。
そして彼女はひたむきに走り続けてくれるだろう。
九州の生産者たちの夢を乗せて・・・。
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内容は先日、 桜花賞に出走したミッキーコマンドの健闘と功績を称えるコラムと、
今日、中山グランドジャンプ(JGI)に出走したバルトフォンテン(牡5)の父ダンツシアトルについての特集です。
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九州産馬のクラシック出走 ~ミッキーコマンドの偉大なる功績~
3歳牝馬クラシックレース・桜花賞。
人間で例えると高校生ほどの年齢の少女たちが、桜舞う中で一生に一度の栄冠を掴むために競うレースだ。その華やかな大舞台に、今年は1頭の地味な血統の少女が出走してきた。
彼女の名はミッキーコマンド。生まれは九州・宮崎。
九州は馬産地としては、質・量とも北海道のそれにはるかに及ばないいわゆるマイナーな馬産地である。当然のことながら、そこで供用されている種牡馬もマイナーの寄せ集めとなっている。
彼女の父の名はダンディコマンド。
現役時にGI勝利という実績のある種牡馬でさえ、結果が出なければ数年で廃用となってしまう厳しい世界の中で、ダンディコマンドは現役時にGI勝利もなく、わずか重賞1勝の実績があるだけだ。産駒数は地方も含めてわずかに10頭。中央に限っては2頭の産駒しかいない。
そんなマイナーな種牡馬を父にもつ地味な血統のミッキーコマンドが、良血馬や素晴らしい実績を残してきた馬たちに混じって、華やかな大舞台に出走してくれたのだ。
彼女を人間で例えるなら、田舎から都会にやってきた純朴なスポーツ少女といったところか。彼女は昨夏、地元九州で2勝をあげ、地味ながらそれでも素晴らしい輝きを放っていた。
夏の日差しが良く似合う純朴なスポーツ少女を連想させる。
良血馬のアドマイヤキッス、フサイチパンドラなどは大富豪のお嬢様であろう。
勝ったキストゥヘブンは良血ながら前者とは少し趣が違い、老舗の名店のお嬢様かな。
キストゥヘブンの血統は以前このメルマガでも紹介したように、名牝スイーブの血を引く古くから日本で活躍している血統である。
それに対してアドマイヤキッス、フサイチパンドラの血統は近年日本に輸入された良血だ。
他にも、エイシンアモーレなどはイケイケのギャルのようなイメージがある。
血統はあまり良くないが、ここまでイケイケで数多くのレースを使われてきており経験豊富だ。また彼女の父エイシンワシントンもイケイケのスピード馬だったし、オーナーの平井豊光さんも調教師の瀬戸口師もイケイケでレースを使うタイプだ。
こんなふうにイメージしだすと、エイシンのあの黒と赤のストライプの勝負服の色が、遠目に見ると今ではすっかり見かけなくなった顔グロギャルの顔の色に見えてきてしまうからおもしろい。
エイシンワシントンは種付け頭数がそれほど多くなく、このメルマガのラインナップに加えるべきか非常に悩んだ種牡馬の1頭である。しかし、エイシンワシントンは産駒数のわりに産駒の成績が良く、サイアーランキングもこのメルマガで紹介している種牡馬に比べかなりいい成績であり、また将来的に種付け頭数が増え、種牡馬としてさらに活躍できるであろうと判断して、それに加えなかった。
そんな経緯があるだけに、その産駒のエイシンアモーレにも密かに注目していた。
話が少し逸れてしまったが、このような面々が参加する華やかな大舞台にミッキーコマンドも参加できたのだった。
彼女の単勝人気は当然のことながら、最低の18番人気だった。
また、ある競馬掲示板では、彼女について「こんな弱い馬がGIレースに出走できてしまうくらいなら、九州産馬限定レースなんて無くしてしまえばいい。」などと揶揄するコメントもあった。
彼女はその九州産馬限定レースを勝って、桜花賞出走に足りうる賞金を獲得している。
九州産馬限定レースは、言ってみればJRAによる弱者救済措置である。なかなか勝つことが出来ない九州産馬に対して、2歳の小倉戦に限り数レースだけ設けられている。
ここ日本における人間社会では、小泉改革により格差が広がってしまったと言われているが、サラブレッド生産界では、その格差は人間社会の比ではない。
社台グループの一人勝ちという状況が続いている。
その大きな牙城を崩そうと、他の生産者たちが必死に試行錯誤しているという構図だ。
その中で九州の生産者はそんな構図にも無関係と言える程はるかに及ばない劣った環境にいるのだ。
ちなみに2004年の統計によれば、国内のサラブレッド総生産頭数7773頭のうち7381頭が北海道産で、北海道以外では青森県 (213頭)、鹿児島県 (34頭)、宮城県 (33頭)、宮崎県 (24頭)、千葉県 (23頭)となっており、東北と九州が北海道に続く馬産地ではあるが、その規模とレベルの隔たりはあまりにも大きいというのが現状である。
そんな劣った環境の九州馬産地から、今年は1頭のヒロインが非常に限れた馬だけに与えられる桜花賞のゲートに入ることができたのだった。
レースでは、彼女は自分の持っている力を十分に発揮し、頑張ってくれた。
結果は11着。それでも大健闘と言えるだろう。
前述した“良血のお嬢様”フサイチパンドラ、“イケイケギャル” エイシンアモーレ、その他に重賞を連勝していたダイワパッションやGI勝利のあるグレイスティアラなどに先着したのだ。
私は彼女を褒めてやりたいと思う。また偉大な功績を残したとも思う。
僅か10頭の産駒しかいないマイナーな種牡馬の子供でも、また劣った環境の九州馬産地の生産馬でも、あのような華やかなスポットライトを浴びる大きなレースに出走できるということを証明してくれたのだから。
彼女の桜花賞出走は九州の生産者やその他の小規模生産者たちに夢と希望を与えてくれただろう。
また父ダンディコマンドの種牡馬としての評価を高めてくれだろう。
そのダンディコマンドは、現在は北海道の日高で供用されている。
当然、繁殖牝馬の質も九州より高い。
ダンディコマンドの今年の種付け頭数とその相手に注目である。
おそらく彼女がGIレースという大舞台に立つのは、これが最初で最後となるかもしれないが、決して悲観しなくてもよい。
彼女は確かに大敗してしまったが、仁川の大舞台を飾った桜とともに、散ってしまった訳ではないのだ。
その大舞台に、小さくても偉大な足跡を残したのだから。
そして九州の生産者たちに夢と希望を与えたのだから。
これからも彼女の戦いは続いていく。
そして彼女はひたむきに走り続けてくれるだろう。
九州の生産者たちの夢を乗せて・・・。
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by masa_ishizawa
| 2006-04-15 17:23
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